M-1グランプリ2017の「笑神籤(えみくじ)」の必要性を考える

2017年のM-1グランプリでは、ネタ順をその都度抽選で発表する「笑神籤(えみくじ)」という仕組みが導入された。

この笑神籤を導入した一番大きな理由として、必ずネタ順が最後になっていた敗者復活組の有利を無くし、極力平等にしたいという思いがあったのではないかと思う。

敗者復活組が有利になるという不平等さは今まで感じていたし、放送後のネット上の声を見ても、笑神籤に対する批判はあまり目にしないので、この試みはある程度成功だったのではないかと思う。

では、何故今まで敗者復活組を一番最後のネタ順にしていたのだろうか。

ドラマチックな演出にしたいというのも当然あるだろうが、
本来敗者復活組が最後になるというのは、実はごく自然の流れだったのではないかと思う。

もし、シンプルに面白い順で並べたランキングの上位9組が決勝進出者に選ばれているのであれば、敗者復活組というのは、ランキング10位のコンビという事になる。
審査員や会場の環境が違うにせよ、ランキング10位のコンビが優勝を狙うのはなかなか難しい事であり、敗者復活組にとって最後のネタ順というのは実は丁度いいハンデになるのではないだろうか。
そしてハンデをもらった状態でも、敗者復活組が優勝するというのは難しい事であり、それでも優勝した時に特別な感動が起こるのではないかと思う。

しかし、準決勝までの審査で「シンプルに面白い順で並べたランキングの上位9組が決勝進出者に選ばれて」いない事は明らかである。

例えば2017年のマヂカルラブリーは、M-1の決勝に選ばれるレベルであるとは思うが、準決勝の時点で敗者復活のスーパーマラドーナより上だったとは想像しにくい。
準決勝時点での審査は、「面白いランキング」を付けているのではなく、「決勝進出者のカード選び」の感覚が強いのではないかと思う。
「審査」というより、M-1グランプリというテレビ番組の「キャスティング」である。

少し批判的なニュアンスで書いてしまったが、実はそれ自体間違っているとは思っていない。
M-1グランプリは漫才の賞レースだが、基本的にはテレビ番組である。
その番組を最大限面白く、ドラマチックにしようと思うと、決勝進出者の「キャスティング」は大事になってくる。
例えば、よく知られていて客ウケが10だったコンビと、まったく無名で客ウケが9ぐらいだったコンビがいたら、無名のコンビをキャスティングした方が番組的に盛り上がるのではないかと考えるのも納得はできる。

決勝進出者が単純な「面白いランキング」ではないのであれば、敗者復活戦に優勝候補が紛れている可能性が出てくるため、そうなるとやはり敗者復活組のネタ順が最後というのは不平等ではないかという事になってくる。

やはり笑神籤の導入は必要だったのだろうか。

しかし、笑神籤が導入された事により、敗者復活組の発表も番組冒頭になり、そのネタ順もランダムになるという事で、
じゃあ結局「敗者復活っている?」という事にもなってくる。
番組冒頭で発表して、他のコンビと同様に扱われるのであれば、そもそも敗者復活という仕組み自体必要が無いのではないだろうか。
「敗者復活組の有利を何とかしたい、でもM-1の歴史上、敗者復活という仕組みを無くすわけにもいかない、じゃあ苦肉の策で笑神籤を導入しよう。」という流れだったのではないかと想像する事もできる。

準決勝の審査が単純な「面白いランキング」であれば、敗者復活組のネタ順が最後になる事は何の問題もなく、
もしそうでないのであれば、笑神籤以前に敗者復活自体の必要性を考えるべきなのかもしれない。

もう一つ、敗者復活に関して良く聞く意見が、
敗者復活組をトップバッターにするべき。という意見である。

決勝進出者にとっては、敗者復活組の有利よりも、トップバッターの不利の方が大きな問題である事は想像に難しくない。
せっかく決勝進出者に選ばれたのに、トップのくじを引いた時点で優勝の可能性は極めて低くなり、こんな事なら準決勝で落ちて敗者復活を狙ったほうが優勝の可能性があったんじゃないかと考えるコンビもいるかもしれない。

そういう事なら、今まで不当に有利だとされていた敗者復活組をトップにしてしまえば良いという考えである。

理にかなった意見だと思うが、問題点が無いわけでもない。
思いつく2つの問題点を上げてみると、

1つは、
敗者復活をトップにする場合、敗者復活の発表を番組冒頭にする事になり、演出上の面白みに欠けてしまうという事。
しかしこれは、笑神籤の場合も同じであるため、笑神籤にするぐらいならこちらの案を採用した方が良いという意見にもなってくる。

2つ目は、
あまりにも敗者復活の旨みが無くなってしまうという事。

準決勝敗退者には敗者復活のチャンスを与えるけど、その代わりトップバッターで客を温めてね。というのでは、敗者復活戦を勝ち上がった勝者を雑用扱いしているようで、少し不憫に映ってしまう可能性もある。
それでもM-1の舞台に立ちたいというコンビも多いだろうが、敗者復活組が優勝する可能性はほぼありませんと言われているようなもので、やる気を失うコンビも多く出てくるのではないかと思う。
敗者復活組と演出する側にとって、敗者復活という仕組みによる旨みはほぼ無くなると言えるだろう。

しかし、この2つのデメリットを帳消しにできるぐらい、トップバッターの不利が解消できるのであれば、敗者復活組をトップにする案は是非とも採用するべき案であると思う。
優勝はほぼ無理と思いながら、当たって砕けろ精神でネタを披露した敗者復活組が会場を一気に盛り上げるという絵を想像する事はできる。
その敗者復活組が最後まで残って優勝するという事があれば、サンドウィッチマンが優勝した時よりも大きな感動が起こるのではないだろうか。

当然、大会運営側でもこの案は議題に上がっていると思う。
この案が採用されない一番の理由は、今まで最後のネタ順だったのが今年からトップバッターで、というのでは、あまりに敗者復活の扱いが前年までと変わりすぎてしまう所にあると思う。
確かにそうなれば、出場者からも不満の声が噴出する事になるだろうし、視聴者側も違和感を感じる事になりそうである。

このように色々と考えてみると、
笑神籤というのは今のタイミングで導入できる一番無難な制度だった、
もしくは、将来的に敗者復活組をトップバッターにするための布石だったと言えるのかもしれない。

最後に、トップバッターの不利を解消するもう一つの案として、
前年度の王者が最初にネタを披露するというのはどうだろうか。

恐らく、ほとんどの審査員が、トップバッターのネタをその日の審査基準にするという審査方法をとっていると思うのだが、
結果的にその審査方法がトップバッターの不利に繋がっているのではないかと考えている。
前年度の王者のネタまで採点する必要は無いが、審査員の中での審査基準にはなる。
王者のネタという事で観る側も安心して見ることができるし、観客の緊張もほぐれ、会場も確実に温まるだろう。
そうなれば、本来トップバッターだったコンビの負担も軽減され、今までよりはまだ正当に審査されるようになるのではないだろうか。

その上で、じゃあ敗者復活組の有利はどうするかといえば、やはり準決勝の審査を、「キャスティング」的な感覚をもう少し減らし、「面白いランキング」に寄せてみてはどうかと思う。
先程、「よく知られていて客ウケが10だったコンビと、まったく無名で客ウケが9ぐらいだったコンビがいたら、無名のコンビをキャスティングした方が番組的に盛り上がるのではないかと考えるのも納得はできる」と書いたが、
「有名なコンビで客ウケが10」「無名なコンビで客ウケが10」という天秤があった場合には無名のコンビを選ぶ、ぐらいの感覚で選んでいただければ、最終的に敗者復活組が異常に強くなる事は避けられるのではないかと思う。

とまあ、ただのM-1ファンの外野がだらだらと私見を書いてみたが、
結局なんだかんだ言っても毎年楽しませていただいているし、どんな形になろうと2018年のM-1も楽しんでいるに違いない。

最終的にとろサーモンが優勝するようなM-1グランプリが好きだし、ルールや審査員が毎年変わろうとも、M-1の優勝者はどの大会の優勝者よりも注目されるという事だけは変わらない偉大な大会であって欲しい。

ゴールデンタイムのクイズ番組で見るとろサーモンに違和感と安心感を感じつつ、
2018年のM-1王者が引く笑神籤も大吉である事を祈っている。

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